Ayuのピアノが奏でる「この時代をピュアに生きる哀しみ」
2007年12月、Ayuのピアノ曲集「Warmth」のデビューは鮮烈であった。たちまち多くの称賛・共感の声が寄せられた。
それは閉塞感漂う病んだ時代を生きる私たちの心身に、甘美な響きと豊かな情感を聖水のように注いだ。ピアノの詩人
鮎の鮮烈なデビューは世代・性別を超えて熱烈に歓迎さ れた。まさに時代が求めていたのだ。
それから4年が経った。Ayuはその日々をピアノに向かい続けながら、その甘美で豊かな情感は陰影や奥行きを深め、
セカンドアルバム「Near you」を生みだした。その間、時代はリーマンショック、未曾有の大震災、原発事故を体験し、私
たちは自らの生きざまを、認識を、感性を再確認することになった。平凡なる日常のかけがえのなさを再認識し、誠実で
偽りのない生の再構築を試みはじめたのだ。そんな状況下で発売される鮎のセカンドアルバムはこの苦渋の時代を「ピ
ュアに生きる哀しみ」に充ちている。非精神性に淀んだ現実の中で、ひたすら純粋で自己に忠実であろうとして傷つく鮎
の繊細な心身が生きる哀しみを醸しだすのだ。それを鮎は「切なさ」と呼ぶ。そんな真摯な生の佇まいから湧出する甘美
な情感こそ詩や音楽の美であり、その真髄につらなっていく。それは聴くものを感動させないはずはない。Ayuのピアノ
が奏でる陰影深く豊かで甘美な音たちは、きっと私たちに優しく深遠な愛を、癒しを、勇気を与え、その響きは時代を超
えて輝き続けることだろう。セカンドアルバムもまた時代が欲しているのだ。 三田洋(詩人) CDジャケットより
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