青の日記  　　　　　まぶしいひかりよそのあおいろのもんのうえに  　レールのわきみちを 　時間の戒律にさからっていく 　快感はあるがむくいをおそれて 　わずかにふるえる 　あるいていくとゆさぶられて 　せなかからふたつに割れていくのがわかる 　いつのまにかしまいわすれたぽけっとのつぼみのようにおれは 　詰襟の十九のおれとにならんでいる 　のどは生傷であおぐさく 　それはいまもあたらしい 　たしかにこれにそっていくとどこかで鋭角に 　入れるはずであった 　ちかくへきてふとおれのじゅうななねんまえのかたちをたずね 　てみようとおもったのだはんぎんの食ぱんでいちにちをいきた 　あの観念のつぼみでとがった顎のひびにふれてみようとおれは 　あるきだしていたせっかくちかくへきたのだから 　たしかにこの方角だと 　おれは詰衿とあとさきになってあるいた 　池のあったちいさな杜はコンクリートの公園になっていた 　いまはみんなコンクリートに成長するのだと 　そこのみぎがわをまっすぐいく 　たしかにこのみちだとおれはこえをだしていう 　そうだと詰衿はこたえる 　むこうに軒のひくい家々がみえる 　とってもふかいなとおもう 　あのふかさからはかると 　みおぼえがあるなとくちにだしていう 　すこしちがうようだとこたえる 　みちをいっぽんまちがえたようだとふたりはきずく 　玩具のような四辻にでる 　しっているぞそこのこいしのうえにああまだおれのしゅうねん 　がみるがいいこんなにこびりついている 　そうだと詰衿はここを左へおれよという 　ちかいなとおれはなんどもいう 　ふかい人里のように三叉路がある 　きたぞとおもうとどぶ川がある 　そうなのだまだあの数週間の死の失意がながれているか川よと 　おれはきく 　あれははるだあめがふっていたとおもうと場所はふいにとんで 　あのきゃんぱすのとしょかんのまえでせいしゅんをつみとろう 　としたあのひとのてがみがみえる非夢想の非愛の裏切りの非連 　帯のさかさまにのけぞりに裏切りのうらぎられた非愛のさかず 　りのながれにいまおれはひくくみとれる 　右手にとつぜん家がある 　これかなと数歩いくと玄関がある 　内臓がうらがえり詰衿にしがみつこうとする 　きんぞくの門はあおくかわっているがちいさなおれのへやにお 　れのまどにぷりんとのかーてんがかかってだれかに占有されて 　ふうけいぜんたいがやせこけてこじんまりとして俺の指あとは 　ゆびはないかそのあおいろの門のうえにかーてんのうらがわに 　内臓のいたみはないかにぎりしめたはずの他人の温度のそのこ 　おるようなきずのあおさとこっけいな自信過多のその愛のうら 　がわの死のれっとういしきのああおれはどこださんじゅういく 　つの俺はどこだつまとこどものゆりかごのしかくいへやと通勤 　のわきみちのないれーるうごかないこんくりーとうごめくのは 　てれびどらまだけのにぶい電燈とうえにのぼらないですくけず 　られる内臓のちぢこまる胃のかべとまがらないれーる樹のはな 　がさくとはなにか実がじゅくすとはなにかつぼみとはなんであ 　るのかたのむからおれはどこだくちをあけたままのきずにわか 　い血のながれのあおくにおうせいしゅんのまぶしいひかりよ 　うねりのすきまから女の子がふたりじてんしゃできて 　門のまえにとまる 　なぜおれはここへいるのかおれはあやしまれぬようにたちさろ 　うとする 　音がしてふりむくと老女がでてくる 　やはりこうなるのだおれのげしゅくのおばさんやはりいろはく 　ろくしかしこんなに老いていまもまだいすわりつづけてあるの 　だとおれはかんどうするふしぎなことにこういうときはいつも 　このようにうまくであうようになっているのだとおれは詰衿に 　いう 　そうだとくしゃくしゃになってこたえる 　おれはあしをはやめる 　きずかれてはならぬとにげる 　わるくはないのだとこえをだすがにげる 　けむたかったからなという 　老女はみるとてのひらをさしだして払ってくれよとおってくる 　おれはひとつになってにげようとする 　すると詰衿は老女になってあとからおってくる 　かえしてくれこのてのひらいっぱいにかえせとおってくる