女
ひとりの女が階段をのぼっていく
入社して流行を着て結婚して妊娠して階段をのぼっている
うしろからみないようにしてみていると
別のひとになってのぼっている
一足ごと手摺につかまっている手は
山行の残雪で花をつんでいた
数年まえの
あのひかりのような手をわたしははっきりとおぼえている
裸
真夜中の風呂は
どこにもなにもいず
風だけがふいている
わたしはからだをなんども洗いながし
ちぢこまっている
おもわず声がでそうだ
福寿草
